仮定法と聞くと「時制がややこしいなあ」とか「ホントよくわからない」みたいなイメージを持っているかたが多いと思います。
助動詞の過去形は全く過去のことを表しませんし、助動詞が付いたりつかなかったり、“If”が省略されて語順が変わるし、最悪なのはIfがついている方の節(If節)が全て省略されていたりしますからね。
ネーミングに関しても現在のことを言っているのに仮定法過去ですし、過去のことを言うときには仮定法過去完了なんて呼ばれていて名前の付け方にも問題があると思います。
仮定法はとてもイメージしにくいので、なんとかイメージをつかもうと思ってネットで調べている人も多いと思うのですが、どのサイトも「時制をずらす」とか、「時制で距離を作る」とか「距離の意識」とか、英文法の本に書いている説明しか書かれてない事が多いので、マジで分かりにくいなあと感じています。
そもそも、「実際の英会話で仮定法って使う?」ということを考えてみると、まあ知らなくても会話はできてしまうというのが現実なので、仮定法について理解しようとする人のほとんどはTOEICや試験用の勉強のためと言うかたが多いでしょう。
ですが、仮定法を理解しておくと相手が本当はどのように考えているのかという心の部分(ニュアンス)が分かってくるので、英会話が目的だというかたも「流暢に話せるようになりたい」と言うところに目標があるかたは逃げないでぜひここで理解して欲しいと思います。
損はさせませんので最後まで読んでみてください。
目次
仮定法を簡単に説明するとどんな表現か
まずは仮定法ってなんぞや?というどこにでも書いていることから軽く確かめていきたいのですが、仮定法は一言で言うと「仮に~だったら、~なのになあ」と実際にはあり得ないような事実ではないこと、もしくは極めて可能性の低い非現実に対して自分の都合のいいように願望を空想、妄想するための表現です。
例文をみると分かりやすいので、1つ超有名な例文をみてみましょうか。
迷いましたがネットや本で調べてるとこれが一番出てくるはずなのでこれにしました。
※仮定法の例文は「金持ちだったら」と「鳥だったら」が多い。
I wish I were a bird.
「(仮に)私が鳥だったらいいのになあ」
If I were a bird, I would fly to you.
「(仮に)私が鳥だったら、私はあなたのところに飛んでいくのになあ」
実際には鳥じゃないわけですから飛べませんし、不可能なことに対して「こうならいいのになあ」という願望を表していますよね。
I wish I had left the house earlier.
「もっと早く家を出れば良かったなあ。」
この例文は、もう過去に戻ってやり直せないことに対して「こうしておけばよかったなあ」と後悔しながら、非現実を表現しています。
こんな感じで実際にはあり得ない願望を想像、妄想し表現するのが仮定法です。
I wish~で始まる仮定法の英文に関しては、“I wish 仮定法”と呼ばれていて、「~だったらよかったのになあ」という現実とは違うことに対してwishを使って表現するフレーズです。
“I wish”を使った仮定法に関してはこちらで詳しく解説しています
⇒ I wishとI hope の違いと使い分けを分かりやすく解説
ついでに時制の話をしてしまうと、過去形で表現しているのが現在のこと、過去完了形で表現しているのが過去のことです。
これを「時制をずらす」とか「現実離れした時制の距離の意識」とか言う言い方で表現されることが多いです。
現在のこと ⇒ 過去形で表現 [仮定法過去]
過去のこと ⇒ 過去完了形で表現 [仮定法過去完了]
この時制のずれをどう理解するのが得策か
仮定法を表現する場合は、このように現在のことは“過去形”、過去のことは“過去完了”という感じで実際の時制とは違う時制で表現するので混乱しやすいのですが、私の結論としては「時制の距離」を感じるという説明でイメージするよりは、「仮定法では時制を過去にずらす」ということを頭に入れたほうが覚えやすいんじゃないかなあと思います。
ですので、とりあえず初期段階では学校で教わったように「現在は過去形」、「過去は過去完了形」とシンプルに覚えておいて、仮定法では、なぜ“will”でなく“would”を使うのかとか、そういう細かいところを少しずつ頭に入れながらイメージしていったほうがいいかなあと思います。
ちなみにTOEICや学校の試験対策の方はそんな細かいニュアンスを覚えずに、“could”、“would”などの助動詞の過去形が出てきたら仮定法を疑うというレベルで覚えておけば十分だと思います。
試験対策の方はIfが省略されたときの倒置とかに時間を割いた方がいいですね。
先ほどの例文で“I was”ではなく“I were”だったことに違和感を感じていたかたがいると思うのですが、「仮定法では“I was”ではなく“I were”を使うと覚えろ」と詳しい説明もなく覚えさせられた人が多いと思います。
If I were(was) a bird, I would fly to you.
※現代では“was”でもOK
Yahoo知恵袋なんかを見ていると英語圏在住の方が、「ネイティブは“were”の代わりに“was”を好んで使う」なんて回答されていたりして実際にそうなんですが、覚え方としては違和感があるwereで覚えた方が心に残るというか記憶に残りやすいと思うんですよね。
フォーマルな場ではいまだに“were”が使われていたりしますし、英語講師の関 正生先生も「世界一分かりやすい英文法の授業」という本でほぼ同じことを書かれていましたので、私からも“were”で覚えてしまうことをおススメしておきます。
中には“was”が使えない仮定法の文もあるので、使い分けを覚えるよりは、「最近はネイティブは“was”を使うんだぜー」と得意げに“was”を使うのではなく“were”を使っておけば面倒じゃなくていいかなあと思います。
英会話で役に立つのか?
じゃあこれ、会話で使うの?と言われると、私は究極に絞るのであれば覚えなくても会話はできると思っている派です。
でもどうせ英会話をするなら相手の気持ちやニュアンスを知りたいじゃないですか。
そう思う方は仮定法を覚えておいて損はないです。
例えばこんな感じ
① If you won the lottery, you would be a millionare.
[仮定法]
② If you win the lottery, you will be a millionare.
[仮定法じゃない直説法]
この2つの例文はどちらも「宝くじを買えば億万長者になれるよ」と言っているのですが、ニュアンスが違います。
①の方は仮定法なので現実的ではないと思いながら言っているので、「(当たるなんてあり得ないと思うけど)宝くじを買えば億万長者になれると思うよ(wouldであいまいに)」という感じのニュアンスで、②の方は「可能性はゼロじゃないんだから宝くじを買えば億万長者になれるよ(willで強く)」と宝くじが当たる可能性がある中で話している感じです。
宝くじだと現実離れしてるので仮定法にはピッタリですが、比較例文としてイメージしにくかったですかね。
もう少し現実的なやつを見てみましょう。
① If you worked out every day, you would lose weight.
[仮定法]
② If you work out every day, you will lose weight.
[仮定法じゃない直説法]
どちらも「毎日運動をすれば痩せられるよ」と言っているのですが、仮定法で表現している①の例文は相手が毎日運動をするとは思っていないというニュアンスが入るので「(毎日運動をするとは思えないけど)毎日運動をすれば痩せられると思うよ(wouldであいまいに)」と少し皮肉っぽく言っていて、②の方は素直に「毎日運動をすれば痩せられるよ(willで強く)」と言っています。
各日本語訳の仮定法に(would)、仮定法を使っていない英文に(will)をわざと付けておいたのですが、これは仮定法にはwillではなく“would”が使われるということと、“would”が“will”よりもかなり控えめなニュアンスの「~だと思うよ」というニュアンスになっていることを言いたかったんですね。
対して“will”は未来形ですので、「きっとそうなる」という前向きが強いニュアンスが入るので、仮の話をしている仮定法には向きませんので使えません。
これは他の助動詞も同じで過去形になると少しあいまいなニュアンスになります。
can → could「できるだろう」
may → might 「かもしれない」
shall → should 「すべきであろう」
仮定法はcould、wouldを使うことが多いですが、“might”や“should”も使えます。
ただ、“should”に関しては試験対策用に見ている方向けに書いておきましたが、現在はあまり使われません。
“shall”も、法律や規約などの堅苦しい英文以外あまり使われませんよね。
would / could / mightの使い分け
would / could / mightの使い分けに関しては、「意味」で使い分ければOKです。
could「できるだろう」
might 「かもしれない」
If I were a bird, I would fly to you.
「私が鳥だったら、私はあなたのところに飛んでいくのになあ」
If I were a bird, I could fly to you.
「私が鳥だったら、私はあなたのところに飛んでいけるのになあ」
If I were a bird, I might fly to you.
「私が鳥だったら、私はあなたのところに飛んでいけるかもしれないのになあ」
助動詞の過去形って過去のこと表してないよね
ここで1つの疑問が思い浮かびますよね。
助動詞の過去形って過去のこと表してないんじゃない?
少ないながらも助動詞を過去形にして「できた」という表現はできるのですが、実際はほとんど使われません。
ネイティブは「できた」と表現したければ“could”ではなく“was able to”を使います。
× I could enjoy the party yesterday.
〇 I was able to enjoy the party yesterday.
助動詞を過去形にして使われる少ないパターンとしては「過去に継続してそれをする能力があった“could”」「過去に継続してそれをする習慣があった“would”」がありますが、基本的にネイティブは“could”や“would”を見ると瞬間的に仮定法をイメージします。
If節が出てきたら仮定法?
仮定法は日本語の「もしも」と言う言葉が本当にピッタリなので、「If節が出てきたら仮定法」と思っている方もいるかもしれませんがその考えは危険です。
確かに仮定法はIf節を使った表現は多いですが、If節は仮定法以外でも多く使われます。
“If”はあくまでも条件なので仮定法とは限りません。
また、If節を使わずにthat節を使って表現する仮定法(仮定法現在)もありますし、If節の“If”は省略可能ですので、英文の中からIfが消えてしまっている場合もあります。
If節全てを省略することもできてしまいますので、やはり「If=仮定法」という法則は成り立ちません。
Ifの省略と倒置について簡単に説明
If節のIfは省略可能だと書きましたが、その場合「Ifを省略しましたよー」という目印に倒置ということが起こります。
倒置は本来の語順が変わることです。
例文で見てみましょう。
仮定法過去
(If 省略) I were a bird, I would fly to you.
→ Were I a bird, I would fly to you.
仮定法過去完了
(If 省略) I had been a bird, I would heve flown to you.
→ Had I been a bird, I would heve flown to you.
Ifを無くして動詞を先頭にもっていくだけです。
ちなみに、IfだけでなくIf節全てを省略することも可能です。
チョット省略しすぎな気もしますが、ネイティブが省略しちゃうわけですから頭に入れておきましょう。
If + 主語 + 動詞の過去形, 主語 + 助動詞の過去形+ 動詞の原形~
ピンク色の蛍光ペンがIf節で、緑色の蛍光ペンが帰結節です。
I could buy a Ferrari.
「Ferrariを買えるのになあ」
この例文は、canの過去形“could”を使っていますが、「買えた」と過去形では訳せません。
この形こそが、If節を省略した仮定法過去です。
could,wouldなどの助動詞の過去形をみたらネイティブは仮定法をイメージすると言うのは、この例文が一番分かりやすいと思います。
If節を略す前の英文はこれです
If I had more money, I could buy a Ferrari.
「もっとお金があったら、Ferrariを買えるのになあ」
いきなりこの話題を振られたとしてら何のことか分かりませんが、話の流れの中では「もっとお金があったらなんて言わなくても分かるよ」という時は略してしまってもOKということです。
もう1つありそうなパターンだと、2人で共通認識のあることについて話すときとかもそうですね。
「ジムどうだった?」
→ジムに行ったことは2人とも知っている(共通認識)
It was pretty hard!
「結構ハードだった。」
(If You had come,)You would have died.
「君が来てたら死んでたヨ」
→“If You had come”を略しても、「君が来てたら」と訳せる。
It was a good thing you didn’t come.
「来なくてよかった。」
話している相手はもうすでにジム(初めての無料体験とか)に行くことを知っていて、そのことについて「どうだった?」と聞いているので、(If You had come,)の部分を言うとしつこい感じになります。
ですので、会話の流れの中でIf節をわざわざ言わなくても前後の文脈で分かる場合はネイティブはIf節を略すと覚えておきましょう。
ちなみに“I wish”を使った仮定法は、帰結節(If節じゃないほうの節)を省略したパターンの慣用表現です。
⇒ I wishとI hope の違いと使い分けを分かりやすく解説
ということで前置きが長くなりましたが、本題の仮定法に入りたいと思います。
前置き長げぇ・・・
でもここまで真剣に読んでくれた方はここから先はスッと頭に入りますので、もう少し頑張って読んでみて下さい。
それと仮定法の種類に関してですが、全部で4種類あります。
仮定法現在
仮定法過去[重要]
仮定法過去完了[重要]
これも仮定法が混乱しやすい原因の1つだと思うのですが、仮定法と言ったら仮定法過去と仮定法過去完了を理解しておけば英会話では問題ないかなあと思っているので、混乱しそうな方は仮定法未来と仮定法現在は飛ばしちゃってください。
最後の方に書いておきますので。
試験対策の方は全部理解しましょう。
仮定法過去「現在の事実に反する仮定や願望を表現」
仮定法過去
英文の中で過去形が使われているので仮定法過去という名前がついているのですが、実際には現在のことを表します。
「仮定法で見た目が過去形の場合は現在のことを言い表す」と無条件で覚えちゃうのがおススメです。
仮定法過去という名前もなんとかならないかなあとは思うのですが、学校でこの名前なんで下手に名前を付けるよりはこのまま覚えるのがいいかな。
If I had more money, I could buy a Ferrari.
「もっとお金があったら、Ferrariを買えるのになあ」
⇒ 実際はお金を持っていなくて買えないので空想を表現(仮定法過去)
If I had time, I would go with you.
「時間があったら、一緒に行くのになあ」
⇒ 実際は時間がないので空想を表現(仮定法過去)
「私が鳥だったら、私はあなたのところに飛んでいくのになあ」
If I had more money, I could buy a Ferrari.
「もっとお金があったら、Ferrariを買えるのになあ」
If I had time, I would go with you.
「時間があったら、一緒に行くのになあ」
仮定法過去「過去の事実に反する仮定や願望を表現」
仮定法過去完了
英文の中で過去完了形が使われているので、仮定法過去完了という名前がついているのですが、実際には過去のことを表します。
If I had had more money, I could have bought a Ferrari.
「もっとお金があったら、Ferrariを買えたのになあ」
⇒ 実際はお金を持っていなくて買えなかったので空想を表現(仮定法過去)
If I had had time, I would have gone with you.
「時間があったら、一緒に行ったのになあ」
⇒ 実際は時間がなくて行けなかったので空想を表現(仮定法過去)
「私が鳥だったら、私はあなたのところに飛んでいけたのになあ」
If I had had more money, I could have bought a Ferrari.
「もっとお金があったら、Ferrariを買えたのになあ」
If I had had time, I would have gone with you.
「時間があったら、一緒に行ったのになあ」
仮定法現在と仮定法未来
ここまで仮定法過去と仮定法過去完了をみてきましたが、仮定法は全部で4つの種類があります。
メンドクセー。
ただ、仮定法で会話に使われるのは、仮定法過去と仮定法過去完了なので残りの2つは軽く見ておきましょう。
仮定法現在
現在や未来に関する不確実な要求(お願い)・必要(重要)・提案などを表す。
英文全体を過去時制にしてもなんで仮定法過去じゃなくて仮定法現在なんだよ?
※現在時制もあり
という面倒なやつがこれ。
「これから~したらどうでしょうか」のような仮定の話をするのですが、If節 は使わずに、that節を使って表現します。
that節は動詞の原形を使うのも特徴で、将来的な提案や注意したほうがいいことを表現します。
また、提案、要求(お願い)、必要など表す動詞や形容詞“suggest,propose,demand,ask,important,better,best,essential”などとセットで使うので、使われる動詞、形容詞は限られています。
仮定法現在
主語+動詞+that+主語+should+動詞の原形
提案
I suggested that we have lunch at the family restaurant.
「私はファミレスでランチを取ろうと提案した」
要求
I demanded that the photo be deleted.
「私はその写真を削除するように要求した。」
重要の基本形
It is+形容詞+that+主語+should+動詞の原形
重要
It is important that you work out every day.
「毎日運動をすることが重要だ。」
仮定法未来
将来的に(未来)実現の可能性がないことをあえて仮定するときに使う表現です
「仮に~したならば~だろう」を表現する
were to
If I were to be reborn, I would want to be a doctor.
「もし生まれ変わることができるなら、私は医者になりたい。」
If the sun were to rise in the west, she would never change her way of thinking.
「もし太陽が西から昇ったとしても、彼女は自分の考えを変えないだろう。」
「万が一~だとしたら」を表現する
should
If you should win the lottely, you would be a millionare.
「万が一君が宝くじに当たったら、君は億万長者になるだろう」
→宝くじはそんな簡単には当たらないというニュアンス
If it should rain tomorrow, I would be Happy.
「万が一明日雨が降ったら、私は喜ぶだろう。」
→明日晴れるという天気予報で、行きたくない行事があるというニュアンスのつもり)
この2例文は文法的には合ってるのですが、「万が一」に合う例文ではないのでネイティブには違和感があると言われています。
どちらかというと“were to”を使った方がニュアンス的に合っていると思うのですが、今は良い例文が思い浮かばないので、後日また修正します。
とまあ、ざーーーーーと一気に書いてしまいましたが、このページは仮定法を理解するための完全保存版ページにしたいので、今後も修正と加筆をお約束します。
もし、ネイティブの方で「このニュアンスや説明違うよー」という方がいらっしゃったらご連絡をいただけるとありがたいです。
よろしくお願いいたします。